Notesからの脱却 その3:Notesアプリケーション移行の流れ

前回の記事では、Notes移行方針策定フェーズで実施するNotes移行アセスメントの流れについて解説しました。今回はNotesアプリケーション(特に掲示板、ファイル管理、ワークフロー機能を持つ業務アプリケーション)をMicrosoft 365へ移行する際の具体的な流れと、押さえておくべきポイントを解説します。

なお、今回は移行先環境にアプリケーション構築の必要がない、メール・カレンダーアプリケーションの移行は対象から外し、掲示板やファイル管理、ワークフロー機能を含む業務アプリケーションの移行(機能移行)を対象とするものとします。

NotesからMicrosoft 365へのアプリケーション機能移行

Notesの業務アプリケーションをMicrosoft 365へ移行する場合、その中心となるのは多くの場合SharePoint Onlineです。基本的な流れとしては、まず移行対象となるNotes DB(データベース)が持つ機能を分析し、それらを再現できるようにSharePoint Online上にサイトやカスタムリストを設計・構築します。その後、構築されたリストに対して、専用のデータ移行ツールを用いてNotes DB内の文書データを移行するという手順になります。

ここで重要なのは、移行の効率化とコスト削減です。企業内には、類似した機能を持つNotesアプリケーションが多数存在することがあります。例えば、「お知らせ掲示板」「部門内通達」「技術情報共有」など、基本的な機能は同じ「掲示板」です。これらを機能ごとにグループ化し、SharePointリストの共通テンプレートを作成・活用することで、個別に開発・移行する手間を大幅に削減できます。どの程度アプリケーションを集約できるかが、Microsoft 365 移行プロジェクト全体のコストを左右する大きな要因となります。

SharePoint Onlineでのサイト構成の考え方

NotesからSharePoint Onlineへ移行する際、単に機能を再現するだけでなく、どこに情報を格納するかも重要な検討事項です。Notesクライアントにはユーザーごとにカスタマイズ可能な「ワークスペース」がありましたが、SharePointには同様の概念はありません。

代わりに、全社共通のポータルサイトや、各部門専用のチームサイトといった階層構造の中に、Notes DBの移行先となるサイトやリストを配置していくことになります。このサイト構成を決定する際には、以下の点を考慮する必要があります。

Notes DBのアクセス権設定:誰がどの情報にアクセスできる必要があったか

各部署でのNotesクライアントの利用実態:どのように情報が分類・整理されていたか

移行後の利便性と管理性:ユーザーが迷わず情報にアクセスでき、管理者が権限設定 などを容易に行えるか

これらの要素を踏まえ、自社に最適化されたSharePointサイトの構成を設計することが、移行後のスムーズな運用に繋がることとなります。

Notes DBの難易度に応じたMicrosoft 365環境への移行

すべてのNotesアプリケーションが同じ方法で移行できるわけではありません。Notes DBの機能や設計の複雑さに応じて、適切なアプローチを選択する必要があります。

〇簡易なNotes DB(掲示板・ファイル管理など)の移行

Notes標準テンプレートをベースに作成された、比較的シンプルな掲示板や文書管理(ファイル共有)のようなアプリケーションは、SharePoint Onlineの標準機能である「リスト」や「ドキュメントライブラリ」で再現できる可能性が高いです。これらのDBは、フォームの設計が単純で、ビューの数も少ない傾向にあります。標準機能を活用することで、開発コストを抑え、比較的短期間での移行が可能です。

〇複雑なNotes DB(ワークフロー、業務アプリケーションなど)の移行

申請・承認プロセスなどのワークフロー機能を含むNotes DBは、移行の難易度が高くなります。これらの多くは、個別の業務要件に合わせて作り込まれており、以下のような特徴が見られます。

複雑なフォーム: 表形式が多用され、フィールド数が非常に多い

多数のビュー: データ表示用だけでなく、計算処理やマスタ参照用の隠しビューも多数存在する

独自のスクリプト: LotusScriptなどで複雑な処理が実装されている

このような複雑なNotes DBの機能をSharePoint Onlineの標準機能だけで完全に再現するのは困難な場合が多いです。そこで活躍するのが、Power AppsやPower AutomateといったMicrosoft Power Platformのサービスです。

Power Apps:Notesの複雑な入力フォームを再現・改善するために利用します

Power Automate:Notesのワークフローを再現するために利用します

これらのツールを組み合わせることで、Notesで実現していた高度な機能をMicrosoft 365環境で再現、あるいはより使いやすく改善することが可能になります。ただし、Power Platformを活用した開発には専門的な知識が必要となるため、標準機能での移行に比べて工数やコストが増加する点には留意が必要です。

まとめ

今回は、Notes アプリケーション移行の具体的な流れ、特に業務アプリケーションをMicrosoft 365(SharePoint Online、Power Platform)へ移行する際のポイントについて解説しました。

Notesアプリケーションの移行を成功させるためには、既存のNotes DBが持つ機能や業務プロセスを深く理解し、それをSharePoint OnlineやPower Apps、Power AutomateといったMicrosoft 365の各ソリューションの特性に合わせて最適化していく視点が不可欠です。

また、類似機能を持つアプリケーションの集約や、Notes DBの難易度に応じた適切な移行アプローチの選択が、コスト効率と移行後の利便性を高める鍵となります。

Notesアプリケーションの移行は複雑なプロジェクトですが、計画的に進めることで、Microsoft 365のメリットを最大限に活かした新しい働き方を実現できます。より詳細な情報や具体的な支援が必要な場合は、専門家への相談も検討してみましょう。

 

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