2024年6月27日に、「Microsoft Power BIで始めるデータ分析 ~サービスの概要、導入メリット、何ができるのか?を解説~」というセミナーを開催しました。今回はその講演内容のポイントについてご紹介します。


● Microsoft Power BIでデータ分析を内製化する方法
昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進化に伴い、企業の内製化の重要性が増しています。2024年度のIT投資動向調査によると、IT投資は増加傾向にあり、DXニーズが多様化して投資が細分化する傾向があります。ビジネスのスピードアップが求められる中、ベンダーに頼らず内製化する必要性が高まっています。

さらに、ローコードツールの進化も内製化を後押ししています。また、ビジネスのアジャイル化が求められる中、内製化は必須となっています。そのうえ、2024年のIT業界展望からも内製化のトレンドと必要性が見えています。

しかし、内製化には多くの課題があります。例えば、技術的な課題として専門知識の不足、技術インフラの整備、データ品質の確保が挙げられます。これらの課題に対しては、Power BIの活用が効果的です。次からはPower BIの概要から導入事例、レポート作成の流れについて紹介します。

● ビジネス判断を高速化するPower BIの導入メリット
最初に、Microsoftが提供するPower BIの概要とその強み、導入するメリットについて解説します。

Power BIはMicrosoftが提供するローコード・ノーコードプラットフォームの一部で、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの一つです。ここで、BIツールとは、ビジネスの意思決定に必要な情報を収集、分析、視覚化するためのツールを指します。具体的には、ビッグデータを集約、分析、見える化することで、データドリブンな意思決定を支援します。

Power BIを導入する最大のメリットは、ビジネス判断の高速化です。このメリットは以下の三つの要素から成り立っています。

まず、大量のデータを迅速に処理できる点です。実際に、従来のツールに比べてデータの処理速度が格段に速く、大量のデータを効率的に取り扱うことができます。

次に、データの可視化です。具体的には、膨大なデータをグラフや表に変換し、視覚的に理解しやすい形で提供することで、データの傾向やパターンを容易に把握できます。

最後に、意思決定の改善です。つまり、複数のユーザーが同じデータを共有し、一致した情報に基づいて合理的な判断を行うことができるため、意思決定のばらつきを防ぎ、組織全体の判断力を向上させることができます。

この特長により、Power BIはビジネスのアジャイル化を促進し、迅速な意思決定を支援します。ほかにも、Power BIを選ぶ強みとして、以下が挙げられます。

一つ目は、Microsoft製品との親和性です。Power BIはExcelなどのOffice製品と似たユーザーインターフェースを持ち、使い慣れた環境で操作を始めることができます。また、AzureやMicrosoft 365といった他のMicrosoftサービスとの連携も強力で、これによりデータの統合や管理がスムーズに行えます。特に、最新の技術であるMicrosoft Fabricとの連携も可能で、組織のデータと分析ニーズを統合的にサポートします。

二つ目は、利用料金の安さです。Power BIは無料プランから利用可能で、有料プランも月額1499円から2998円と比較的安価です。そのため、競合他社の製品と比べても価格競争力が高く、コストパフォーマンスに優れています。

以上のように、Power BIはMicrosoft製品との高い親和性と手頃な利用料金も強みとしており、多くの企業にとって導入しやすいBIツールです。

結果として、Power BIの導入により、効率的なデータ管理と迅速なビジネス判断が可能となり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与できます。

● Power BIを使ったレポート作成の流れとポイント
続いて、Power BIを用いたレポート作成のプロセスと、その際に押さえておくべきポイントについて解説します。

まず、レポート作成の全体的な流れについて説明します。

最初に、目標を設定することから始めます。この目標設定は、レポートの最終的な目的や利用者を明確にするために不可欠です。

次に、その目標を達成するために必要なデータを準備します。このデータは、既存のデータソースから取得するか、新たに収集することが考えられます。続いて、そのデータを用いて実際にレポートを作成します。

最後にレポートを展開し、必要なアクセス権を設定して関係者が利用できるようにします。

ここで、目標設定とデータ準備の順序が逆転することがあるという経験をお話しします。データが先行して目標が曖昧になると、レポートの目的が分散しやすくなります。例えば、複数の関係者が異なる目的で同じデータを使用したいと考えた場合、誰かの要望を満たすと他の誰かが不満を抱くことがあります。このような場合は、一度目標に立ち返り、具体的に何を達成したいのかを明確にしてからデータの利用を再検討することが重要です。

目標設定のポイントとして、まず誰がレポートを使用するのかを決めます。例えば、意思決定者、アナリスト、業務担当者のいずれかに応じて、それぞれのニーズに合った情報を提供します。次に、必要な情報を特定します。具体的には、売上や在庫などのデータを洗い出し、その利用方法を決定します。意思決定者には中長期的な経営判断のデータ、アナリストには戦略評価の詳細データ、業務担当者には日々の業務に直結するデータが必要です。

データの準備については、既存データの活用と新規データの取得の2つの方法があります。まず、既存データを活用する場合は、Power BIがさまざまなデータソースに接続可能であるため、社内にある利用可能なデータを洗い出して使用します。一方、新規データを取得する場合は、目標に応じて必要なデータを収集します。この場合、データの取得には時間がかかることがありますが、目標に最適化されたデータを得ることができます。

実際のレポート作成のデモでは、目標を仮定し、アナリスト向けの売上データを使ったレポートを作成しました。具体的には、データ接続、セマンティックモデルの作成、ビジュアルの作成、スライサーの作成、そして最終的なレポートの発行という手順を行いました。さらに、データの変換やクリーニングはPower Queryエディターを使い、データの形式を適切に整えるところを実演しました。

ビジュアル作成の段階では、月別の売上を積み上げ縦棒グラフで視覚化し、商品カテゴリ別の売上も表示しました。さらに、販路ごとの販売数をドーナツグラフで示し、フィルター機能を持つスライサーを使って、特定の条件下でのデータ表示を可能にしました。これにより、ユーザーはデータを多角的に分析し、必要な情報に素早くアクセスできるようになります。

以上が、Power BIを用いたレポート作成のプロセスとそのポイントです。この方法を用いることで、企業内の情報システム部門は、効果的なデータ分析とレポート作成を行い、ビジネス判断を迅速かつ正確に行うことができます。

● Power BIによる効果的なレポート共有と業務改善事例のご紹介
最後に、Power BIを活用した効果的なレポート共有と業務改善のアプローチについて、事例を交えて解説します。

レポート発行後は、以下の方法でPower BIサービスにアップロードされたレポートを展開できます。まず、リンクを発行し、共有することができます。また、各レポートに対してアクセス権限を付与し、特定のユーザーにアクセスを許可することも可能です。

これらの方法を活用し、メールやチャット、社内報などを通じて該当者に通知します。しかし、通知するだけでなく、そのデータを用いて経営判断を行うことが重要です。定例会議などに組み込むことで、継続的に活用する流れが生まれます。

つづいて、具体的な事例を2つ紹介します。まず、取引先の自動車メーカー様の事例です。この企業では、営業課題がブラックボックス化しており、PDCAサイクルが回せず業務が属人化していました。弊社、株式会社テンダでは、営業活動の予実管理アプリをPowerAppsで開発し、そのデータをビジュアル化しました。この対応により、業務の過不足や偏りが可視化され、PDCAサイクルを通じて業務の標準化が実現しました。

もう一つの事例は、弊社内での取り組みです。以前、弊社製品の利用継続率が低下しており、エクセルでの集計作業が担当者の負荷となっていました。これに対し、Power BIで利用状況をビジュアル化し、Power Automateを活用して集計作業を自動化しました。その結果、利用継続の打診が効果的に行えるようになり、集計作業の工数も大幅に削減しました。

これらの事例からも分かるように、Power BIはデータの可視化と業務の効率化に大いに貢献します。さらに弊社は、マイクロソフト系の技術情報や事例を紹介するMS Techブログを運営しており、Power BI関連の記事も多く掲載しています。

ここで、弊社のサービスについてご紹介します。弊社はマイクロソフトの利活用サービスを提供しており、Power BIやPower Platform全般の技術的サポートを行っています。期間契約や時間単位のチケット方式で、お客様のニーズに応じたサポートを提供しています。特にPower BIに関しては、60時間のパッケージセットもご用意しており、基礎から深い活用まで対応可能です。

今回のセミナー内容を踏まえ、Power BIの活用をぜひご検討ください。詳細は弊社のWebページやメーリングリストでご確認いただけます。また、今後も頻繁にセミナーを開催していきますので、ぜひご参加ください。

■ 弊社関連URL
  ・Microsoft 365情報発信メーリングリスト登録:  https://form.k3r.jp/tenda_msales/tenda_ml2
  ・Microsoft Power Platform関連ブログ:  https://mssp.tenda.co.jp/blog/powerplatform/
    Microsoft 365の機能を駆使した、応募者リストの管理と承認対応をボタンひとつで自動化
     https://mssp.tenda.co.jp/blog/powerplatform/4056/
    Power BI入門 3つの特長と活用事例について
     https://mssp.tenda.co.jp/blog/powerplatform/4159/
    Power BI入門 無料版と有料版の違いは? 料金プラン・インストール方法について解説!
     https://mssp.tenda.co.jp/blog/powerplatform/4292/
    Power BI入門 ハンズオン前編 野球データを用いたレポートの作成
     https://mssp.tenda.co.jp/blog/powerplatform/4370/
    Power BI入門 ハンズオン後編 データの加工と取り込み
     https://mssp.tenda.co.jp/blog/powerplatform/4489/
  ・MSソリューションページ  https://mssp.tenda.co.jp/
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